
【五右衛門風呂の歴史と日本のお風呂文化】
子どもの頃、私の家のお風呂は五右衛門風呂でした。
今のようにボタン一つでお湯が張られる時代ではありません。大きな鉄の釜に水を張り、下から薪をくべて火を焚きます。パチパチと爆ぜる薪の音、立ちのぼる煙の匂い、そして釜の縁からゆらゆらと立ち上る湯気──その情景はいまも鮮明に思い出せます。
入る前には必ず湯加減を確かめました。丸い木の底板をそっと浮かべ、それを足で押さえながら、しゃがむように体を沈めていきます。鉄の側面は焼けるほど熱く、うっかり触れれば火傷をしてしまう。だから家族は一人ずつ順番に入るのが決まりでした。