スポンサーリンク

太陽王は生涯、ほぼお風呂に入らなかった
想像してみてほしい。フランス史上最も華やかな王、ルイ14世—「太陽王」と呼ばれ、ヴェルサイユ宮殿という絢爛豪華な宮殿を築き上げた絶対君主が、生涯でほとんど風呂に入らなかったという事実を。
記録によれば、ルイ14世が初めて全身浴を経験したのは7歳のとき。その後、彼が水に浸したのは指先くらいのもので、体を洗うことはほとんどなかったという。代わりに宮廷は香水の霧で満たされ、王族特有の体臭は「高貴な香り」として称賛された。
現代の私たちからすれば信じがたい光景だ。毎日シャワーを浴び、週に何度も湯船に浸かる私たちにとって、入浴は当たり前すぎる日常。しかし中世から近世ヨーロッパの人々にとって、お風呂こそが恐るべき毒だったのだ。
あなたは1週間風呂なしで香水だけで過ごせるだろうか? 彼らは本気でそれを信じ、実践していたのだ。現代の私たちがシャワー中毒なら、彼らは完全な「シャツ中毒」だったのである。
ペストが殺したのは人だけではなかった—入浴文化の死
この奇妙な衛生観念は、一夜にして生まれたわけではない。その背景には、ヨーロッパを恐怖のどん底に突き落とした黒死病、すなわちペストの大流行があった。
14世紀、黒死病はヨーロッパ人口の3分の1から半数を奪い去った。人々は必死で原因を探り、予防法を模索した。そして当時の医学者たちが導き出した結論が、「熱い湯が毛穴を開き、そこから毒気が体内に侵入する」というにわかに信じ難いものだったのだ。

この理論に基づき、各地の公衆浴場が次々と閉鎖された。古代ローマ時代には、豪華な浴場が社交の場として栄え、清潔さは文明の証とされていた。しかしキリスト教の禁欲主義の影響と疫病への恐怖が重なり、入浴文化は急速に衰退していった。
16世紀から17世紀にかけて、この「水=危険」という考えはさらに極端になる。水そのものが「病気の運び手」とみなされるようになり、フランスの著名な医師テオフラスト・ルノドーは「入浴は毒である」と断言した。
医学的権威がそう宣言したのだから、人々が信じるのも無理はない。
では、彼らはどうやって清潔を保っていたのか? 答えは驚くほどシンプルだった。リネンのシャツに着替えることである。1ヶ月に1回シャツを替えれば十分清潔だと、本気で信じられていたのだ。

香水帝国の誕生—臭いをごまかせ!
入浴を拒否した代償は、当然ながら体臭だった。しかし人類は実に創意工夫に富んでいる。水が使えないなら、別の方法を編み出せばいい。こうして生まれたのが、ヨーロッパ独自の「代替清潔術」だった。
第一の武器は、頻繁なリネンシャツの着替え。リネン(亜麻布)は汗をよく吸収するため、体から出る汚れをシャツに吸い取らせ、それを交換することで清潔を保つという発想だ。貴族たちは何十枚ものシャツを所有し、日に何度も着替えることもあった。シャツの白さこそが清潔さの証明であり、ステータスシンボルでもあったのだ。
そして第二の、そしておそらく最も重要な武器が香水である。
十字軍の遠征を通じてもたらされた「ハンガリー水」と呼ばれる初期の香水は、瞬く間にヨーロッパ全土を席巻した。香水産業は爆発的に成長し、特にフランスのグラースは香水製造の中心地として栄えた。体臭を消すため、貴族たちは香水を浴びるように使用した。
ヴェルサイユ宮殿の実態は、現代人には想像を絶するものだった。トイレ設備が不十分だったため、宮殿内には排泄物が放置され、悪臭が漂っていた。しかし大量の香水によって「エレガントな香り」を演出することで、この不潔さは覆い隠されていたのである。

興味深いことに、マリー・アントワネットだけは例外だった。オーストリア出身の彼女は、故郷の入浴習慣を懐かしみ、フランス宮廷の不潔さに辟易していたという記録が残っている。
現代のシャネルやディオールといった名高い香水ブランドのルーツを辿れば、この「不潔を隠す必要性」に行き着く。不潔もまた、イノベーションの母だったのかもしれない。
逆転の科学革命—水は敵から味方へ
では、いつ、どのようにして状況は変わったのだろうか?
転機となったのは19世紀、ルイ・パストゥールによる細菌理論の確立だった。病気の原因が「毒気」や「悪い空気」ではなく、目に見えない微生物であることが科学的に証明されると、衛生観念は劇的に変化した。
水は突然、敵から味方へと反転した。細菌を洗い流すための最良の手段として、入浴が推奨されるようになったのだ。上下水道の整備、石鹸の大量生産、そして浴室を備えた住宅の普及。こうした「清潔革命」によって、日常的な入浴は現代社会の標準となった。
興味深いのは、地域による入浴文化の違いだ。日本では古くから銭湯文化があり、湯船に浸かってリラックスすることが好まれてきた。一方、欧米ではシャワー文化が主流となり、効率的に体を洗うことが重視される。どちらも「清潔」を目指しているが、そのアプローチは文化的背景によって異なるのだ。
しかし、ここで興味深い問題が浮上する。現代の私たちは、清潔すぎるのではないか、という問いだ。
抗菌グッズの多用、過度な除菌、一日に何度もシャワーを浴びる習慣…これらが逆に私たちの免疫システムを弱めているのではないかという研究も存在する。中世の「水は毒」という極端から、現代の「過剰衛生」という別の極端へ。歴史は私たちに、清潔のバランスこそが重要だと教えてくれているのかもしれない。
今夜の風呂は、歴史の贅沢?
ルイ14世が生涯ほとんど風呂に入らず、香水で体臭を隠していた時代から数百年。私たちは今、蛇口をひねればいつでも清潔な水が出て、温かい湯船に浸かれる時代に生きている。
これは決して当たり前のことではない。人類の長い歴史の中で、ごく最近になって手に入れた特権なのだ。
今夜、あなたがシャワーを浴びるとき、あるいは湯船に身を沈めるとき、少しだけ歴史を思い出してほしい。かつての人々が恐れ、避け、それでも香水とシャツで必死に清潔さを保とうとした姿を。そして科学が迷信を打ち破り、水が再び私たちの味方になった奇跡を。
自宅湯原料 12包セット ゆっくり温泉気分 Amazon おすすめ
入浴は単なる日常ではない。それは人類が勝ち取った、清潔という名の小さな革命なのだ!!
あなたは今夜、風呂に入りますか? それとも香水で済ませますか?
✱中世ヨーロッパの衛生事情についてもっと知りたい方は、キャサリン・アシェンバーグ著『不潔の歴史』をぜひ手に取ってみてください。歴史の不潔さが、現代の清潔さをより輝かせてくれるはずです。
【とろける美容液バスミルク】YuraNe 入浴剤 保湿 リラックスアロマバス 美容睡眠 300ml
-終わり-
最後までお付き合い下さり有難う御座います!
この記事があなたの明日のスパイスとなれば嬉しいです。
スポンサーリンク