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猫の毛色&模様 まるわかり100! 三毛、トラ、白黒etc.毛柄でキモチも見えてくる! 学研ムック
猫は、かわいい。
丸くなって眠る姿。窓辺で日向ぼっこをする横顔。気まぐれに近づいてきて、また離れていく態度。
現代の私たちにとって、猫は「癒やし」の象徴です。
けれど、ちょっと待ってください。歴史をさかのぼると、猫ほど評価が激しく揺れ動いた動物は、そう多くありません。古代エジプトでは、猫は女神と結びつく神聖な存在でした。ところが中世ヨーロッパになると、猫は魔術、異端、夜、そして悪魔と結びつけられるようになります。
神聖だった猫は、なぜ悪魔の動物になったのか。
今日はこの問いを、古代から現代まで一気にたどってみます。
先に断っておきたいことがあります。「中世ヨーロッパでは猫が一律に悪魔扱いされていた」という話は、実は単純化しすぎです。
猫は当時も普通に飼われ、ネズミ除けとして重宝されてもいました。つまり「猫=悪魔」という単純な話ではない。この矛盾こそが、今日の記事の核心です。
古代世界では、猫は神だった
まずは古代エジプトから始めましょう。猫はネズミや蛇を捕える実用的な動物であると同時に、宗教的な意味も与えられていました。中心にいるのが、女神バステトです。
バステトは当初、ライオンの姿を持つ猛々しい女神でしたが、やがて猫、あるいは猫の頭を持つ女性として描かれるようになります。ここに与えられたイメージは、母性、家庭、豊穣、守護、そして神性。つまり猫は、人間社会を守る存在だったのです。
このあとに登場する「魔女の使い魔」というイメージとは、まるで正反対だとわかります。
キリスト教は、最初から猫を嫌っていたわけではない
よくある説明では「キリスト教が猫を悪魔として迫害した」とされがちです。しかしこれは単純化しすぎでしょう。キリスト教が成立した直後から「猫=悪魔」という明確な教義が存在したわけではありません。
むしろ重要なのは、キリスト教がヨーロッパ全域に広がっていく過程で、それ以前から存在していた異教的な宗教観や象徴の体系が、少しずつ再解釈されていったという点です。
異教の神聖な動物は、新しい世界観の中でどう位置づけ直されたのか。ここに、猫の運命を左右する分岐点があります。
「夜に動く動物」という、猫の不気味さ
猫という動物には、人間から見ると不思議な特徴がいくつもあります。
昼よりも夜に活発になる。暗闇でも目が光って見える。足音を立てずに歩く。いつの間にか、そこにいる。高い場所にも、狭い場所にも入り込める。人間とはまったく違う時間感覚で生きている。
現代では、ただの習性です。けれど科学的な知識が乏しかった時代には、「何か普通ではない存在」として解釈される余地がありました。
夜とは、未知であり、死であり、悪霊の領域でもある。そんな中世ヨーロッパの象徴的世界と、猫の生態が重なり合っていきます。
猫は「悪魔だった」のではありません。人間が理解できない、夜の世界を生きる動物だった。それだけのことだったのかもしれません。
消えなかった古い信仰の残響
キリスト教化以前のヨーロッパには、多様な宗教や民間信仰が存在していました。キリスト教が広まったあとも、古い習俗がすぐに消え去ったわけではありません。異教信仰は、しばしば「悪魔的なもの」として位置づけ直されていきます。
猫そのものが異教だった、という単純な話ではありません。ただ、古い宗教文化と結びついた象徴が、新しい宗教秩序の中で再解釈される可能性は、常にあったのです。古い神々は、悪霊や悪魔という形に姿を変えて、人々の想像の中に残り続けました。

「女性」と「猫」が結びついた理由
中世ヨーロッパでは、猫が女性、家庭、夜、秘密といったイメージと結びつけられることがありました。同じ時期、魔術への疑いのまなざしも、女性へと向けられていきます。
女性、夜、猫、魔術。これらのイメージは、時間をかけて少しずつ結びついていきました。「猫を飼っていた女性が魔女にされた」というような単純な図式ではありません。むしろこれは、社会が「理解できない女性の力」や「制御できない自然」をどう象徴化してきたか、という社会史の問題として捉えるべきでしょう。
「魔女の使い魔」という恐ろしいイメージ
ここでようやく、有名な「猫=魔女の使い魔」というイメージにたどり着きます。魔女裁判や魔術に関する記録の中では、動物が魔女と結びつけて語られることがありました。
猫だけではありません。犬、ヒキガエル、ネズミ、鳥。さまざまな動物が魔術的な存在として語られています。つまり、猫だけが特別に悪魔化されたわけではないのです。
それでも猫が、とりわけ強烈なイメージを獲得したのはなぜか。夜行性であること。独立した性格に見えること。人間の命令に従わないように見えること。暗闇で目が光ること。こうした特徴が重なり合い、猫は他の動物よりも「不気味な象徴」として際立っていったのだと考えられます。

黒猫は、なぜ不吉になったのか
現在でも「黒猫は不吉」という迷信は、世界のあちこちに残っています。けれど「黒猫は昔から世界共通で不吉だった」わけではありません。意味は地域や時代によって、大きく異なります。
ここで注目したいのは、黒という色そのものが持つ宗教的・文化的な意味です。中世ヨーロッパの象徴世界の中で、黒は闇、死、悪、悪魔、未知と結びつく色でした。そこに、夜に活動する猫と、黒という色が組み合わさります。結果として、黒猫は「夜の闇を歩く不吉な存在」というイメージを強めていったのです。
「中世=猫の大虐殺」という単純な話ではない
インターネット上ではしばしば、「中世ヨーロッパでは猫は悪魔とされ、大量に殺された」という話が語られます。しかし、この話は慎重に扱う必要があります。
猫が魔術や悪魔と関連づけられた事例は確かに存在します。けれど「ヨーロッパ全土で猫が組織的に大量虐殺された」という単純な歴史像を描くのは危険です。むしろ重要なのは、猫が現実の生活では役に立つ動物でありながら、一部の宗教的・民間的な言説の中では不吉な存在として語られる、という二重構造があったことです。
伝説と史実を、混同しないこと。これは、今日の記事でもっとも大切にしたい姿勢です。
都市が大きくなるほど、猫は必要とされた
中世の都市が抱えた大きな問題のひとつが、ネズミと食料の関係でした。穀物、肉、パン。食料が集まる都市では、猫は非常に実用的な存在でもありました。
猫は怖がられながらも、人間に必要とされていた。もし本当に「悪魔の動物」だと考えられていたなら、人間はなぜ猫を完全に排除しなかったのでしょうか。答えはシンプルです。現実の生活の中で、猫が役に立ったからです。
宗教的なイメージと、生活の実態は、必ずしも一致しません。このずれこそが、歴史の面白さだと言えるでしょう。

「猫=魔女」のイメージが完成する近世
中世から近世へと時代が進むと、魔女狩りはさらに激しさを増していきます。魔女と悪魔の結びつきが、より強く意識されるようになる時代です。そして魔女の周辺にいる動物たちが「使い魔」として語られるようになります。
猫は、このイメージの中でとりわけ強烈な存在感を持つようになりました。つまり、私たちが今持っている「魔女と黒猫」のイメージは、中世そのものというより、近世の魔女像の形成に大きく影響を受けているのです。
「黒猫、魔女、ほうき」が現代まで残った理由
ハロウィンを思い浮かべてみてください。魔女、黒猫、満月、古い屋敷、墓地。これらはすっかりセットになっています。
けれどこれは、中世そのものの姿ではありません。中世・近世の魔術観から始まり、魔女裁判、文学、民間伝承、十九世紀のゴシック文化、大衆文学、そして映画や漫画やアニメを経て、現代のハロウィン文化へとつながっていきました。
つまり「中世の猫」がそのまま現代に残ったのではありません。何度も物語として作り直されてきた猫の姿が、今の私たちの前にあるのです。

「猫=不吉」は、世界共通ではない
ここで少し視野をヨーロッパの外へ広げてみましょう。猫に対する文化的な評価は、地域によって大きく異なります。
古代エジプトでは神聖な存在でした。イスラム文化圏には、猫に対して比較的好意的な伝承も残されています。そして日本には、招き猫という象徴的な存在があります。
同じ猫という動物なのに、人間社会はまったく違う意味を与えてきたのです。猫が不吉なのではありません。人間が、猫に不吉という意味を与えたのです。
猫が悪魔になったのではない
最後に、少しだけ立ち止まって考えてみます。
猫は古代から現在まで、基本的には同じ動物です。夜に歩き、暗闇で目を光らせ、静かに近づき、人間の命令に必ずしも従わない。
変わったのは、猫ではありません。猫を見る、人間の世界観です。
古代には、神聖な存在として見られました。中世・近世の一部の宗教的な言説の中では、魔術や悪魔と結びつく存在として語られました。そして現代では、かわいいペットになっています。
神から、悪魔へ。悪魔から、ペットへ。動物そのものは、何も変わっていません。
猫が悪魔になったのではなく、人間の世界観が変わるたびに、猫の意味が変えられていったのです。
今夜、あなたの家で丸くなっている猫を見たら、少しだけ思い出してみてください。その静かな瞳の奥には、女神として崇められた記憶と、悪魔と恐れられた記憶が、同時に眠っているのかもしれません。
The end
最後までお付き合い下さり有難う御座います、この記事があなたの明日を少しだけ彩るスパイスとなれば嬉しいです。
Thank you for reading to the end. I hope this article adds a little spice to your day tomorrow.
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